ドイツ ブンデスリーガ「リーグガイド・日本人&注目選手」
見どころ -Highlights-
前半戦はバイエルンが首位! 昨季無敗優勝のレヴァークーゼン、フランクフルトらが追走
バイエルン加入の伊藤、堂安、板倉、佐野らの日本人選手にも期待
激しい一対一をベースに、攻撃的なサッカーが展開されるドイツ・ブンデスリーガ。熱狂的なサポーターが集まるスタジアムの雰囲気と相まって、かつてシャルケに所属していた内田篤人が「まるで闘技場」と表現するほどの熱量を誇る。近年は、ブンデスリーガ発の新たな戦術スタイルが世界に衝撃を与えることも多く、戦術マニアにとっても目が離せないリーグとなっている。
後半戦を迎えた24-25シーズンのブンデスリーガは、第20節を終えた時点で王座奪還を目指すバイエルンが首位。それを、昨季バイエルンの12連覇を阻止し、リーグ史上初の無敗優勝を成し遂げたレヴァークーゼンが2位で追走。3位にはフランクフルトが躍進する展開となっている。

ドイツサッカー界の盟主・バイエルンでは、昨季得点王のケインが今季も得点ランク首位を走り、期待通りの活躍でチームをけん引。ドイツ代表の未来を担うスーパードリブラー、ムシアラや、チームの要であるキミッヒらも健在だ。さらに、新加入のフランス代表FWオリーセもチームの新たな攻撃オプションとして機能しており、コンパニ新監督のもと、優勝に向けて前進を続けている。
レヴァークーゼンは2位に甘んじているものの、黒星はわずか1つ。昨季に続き、無敗優勝の実力を今季も十分に発揮している。欧州選手権での活躍も記憶に新しいドイツ代表MFヴィルツは、今季もそのクリエイティビティを存分に発揮し、世界的スターへの階段を着実に上っている。その他にも、FKの名手グリマルドや、チームの精神的支柱であるジャカなどを擁し、シャビ・アロンソ監督の指揮のもと、バイエルンを逆転する可能性は十分に残されている。
そのほか、フランクフルトが来季のUEFAチャンピオンズリーグ出場権内となる3位と奮闘。MFシャビ・シモンズらを擁するライプツィヒも4位につけ、上位戦線に食い込んでいる。一方で、心配なのが名門ドルトムント。現時点で11位と低迷しており、監督をシャヒンからニコ・コヴァチに交代するというカンフル剤を投入した。ここからイエロー&ブラックの人気クラブが、来季につながるような戦いを見せられるかに注目が集まる。
そして、ブンデスリーガで活躍する日本人選手にも期待がかかる。まずは、昨季シュトゥットガルトでの活躍が高く評価され、約40億円ともいわれる移籍金でバイエルンに加入した伊藤洋輝。開幕前の練習試合でタックルを受けて骨折し、長期離脱を余儀なくされたが、ついに練習復帰を果たしており、待望のバイエルンデビューが待たれる。

日本代表の10番を背負う堂安律は、フライブルクでの3シーズン目となる今季も攻撃陣の中心として躍動。リーグ戦20試合で6ゴールを記録し、シーズン二桁得点も現実的な数字となっている。後半戦でのさらなる活躍が期待される。
ボルシアMGには、日本代表DF板倉滉と20歳の新鋭FW福田師王が所属。板倉は変わらず守備の大黒柱として活躍し、福田は限られた出場機会の中で、1月にブンデスリーガ1部での初得点を記録している。
また、鹿島アントラーズからマインツに移籍した佐野海舟は、開幕から定位置をつかみ取ると、相手の攻撃の芽を何度も摘み取る献身的なプレーで、6位と躍進するチームに大きく貢献。地元のみならず、リーグ全体からも注目を集め始めている。
ホルシュタイン・キールのFW町野修斗は、チームが降格圏に沈んでいるものの、個人としてはすでに7得点を記録。昨季2部で残した得点数を上回る活躍で、存在感を発揮している。バーミンガム・シティFC(イングランド)からボーフムへ完全移籍した三好康児も、チームが最下位に沈む厳しい状況の中で奮闘を続けている。(2025年2月7日時点)
必見のプレーヤー -Featured Player-
日本人注目選手

伊藤 洋輝
(いとう ひろき)バイエルン
- 生年月日:1999年5月12日
- ポジション:MF/DF
昨季は2位と躍進したシュトゥットガルトにおいて、マルチな活躍でDFラインを支えた伊藤に今オフ届いたのは、ドイツの盟主・バイエルンからのオファー。新シーズン、日本代表DFは更なる高みを目指して、欧州最高峰クラブでの戦いに臨むことになる。
3年前に当時J2のジュビロ磐田からシュトゥットガルトに期限付きで移籍した当初は、将来を見据えてU-21チームで武者修行する予定だった。しかし、その評価をひっくり返して加入年度開幕直後からポジションを掴んだ伊藤は、そこからの3年間でうなぎ登りに評価を高め、移籍金約40億円とも報じられる額でバイエルンから声がかかるほどまでに躍進を遂げた。
元々はボランチとしてデビューしただけにボール扱いは巧みで、利き足の左足から繰り出させるロングドフィードは高精度を誇り、188cmの長身で空中戦も戦えるという貴重な存在。開幕前の練習試合での骨折により離脱となってしまったが、シーズンが終わった時にバイエルンにとって伊藤がどのような存在になっているか、期待を持って見守っていきたい。(2024年8月1日時点)

堂安 律
(どうあん りつ)フライブルク
- 生年月日:1998年6月16日
- ポジション:MF
2022年カタールでの大舞台におけるドイツ戦とスペイン戦のゴールで、日本人サッカーファンの記憶に残り続ける存在となった堂安。好選手が揃う日本代表MF陣の中でも、大舞台で結果を残すという勝負強さは特筆すべきものだ。
近年、好成績を続けるフライブルクにおいて3年目を迎える堂安は、今やチーム攻撃陣の中心。初年度は5得点、昨季は7得点と数字を残しており、来季は二桁得点も不可能ではないはずだ。驚異の左足を武器とするアタッカーの更なる飛躍を期待したい。(2024年8月1日時点)

板倉 滉
(いたくら こう)ボルシアMG
- 生年月日:1997年1月27日
- ポジション:DF/MF
ボルシアMGで3年目を迎える板倉。昨季はシーズン序盤に好調なプレーを披露しながら10月に足首の手術での離脱となったが、ウィンターブレイクでのアジアカップで復帰を果たすと、シーズン後半はボルシアMGの守備陣の要として存在感を見せた。
186cmと長身ながらDFとボランチの両方をこなせるポリバレント性もある板倉。ブンデスの名門クラブで、ケガと戦いながらも2シーズン続けてチームから認められる活躍を披露した。日本代表のDF陣においても最早欠かせない存在となった中、今季は更にもう一段上の活躍を期待できるかもしれない。(2024年8月1日時点)

福田 師王
(ふくだ しおう)ボルシアMG
- 生年月日:2004年4月8日
- ポジション:FW
19歳にしてU-22日本代表にも選出されるなど、日本代表としての将来を嘱望される福田。昨季途中にトップチームに昇格しブンデス1部デビューも果たすなど、ドイツの名門ボルシアMGにおいてもその潜在能力は認められている。
神村学園高時代には冬の選手権で得点王に輝くなど、高い評価を得ていた世代屈指のストライカーは、Jリーグ入りではなくドイツ名門クラブの下部組織からの挑戦。高校卒業前の1月にチームに合流して同世代のU-19チームで結果を残すと、渡独からわずか1年でトップチームへの切符を勝ち取った。
今季は開幕前の練習試合でゴールという結果を残すなど、自身としてもトップで戦えるという自信を深めているはず。期待の新星の輝きが本物なのか、楽しみなシーズンとなりそうだ。(2024年8月1日時点)

チェイス・アンリ
シュトゥットガルト
- 生年月日:2004年3月24日
- ポジション:DF
シュトゥットガルトからのオファーを受け、高校卒業後に直接海外行きという選択をした逸材が、20歳となって迎えた加入3年目にしてついにトップチーム昇格。今季開幕戦で途中出場からデビューを飾ると、第2戦では初スタメンと、順調なスタートを切っている。
尚志高時代に高校サッカー界屈指のディフェンダーとして評価され、日本A代表にもトレーニングパートナーとして参加した経験を持つチェイス・アンリ。187cmという長身の上にスピードも持ち合わせるという恵まれたフィジカルを武器に、クラブの日本人の先輩である遠藤航(現リヴァプール)と伊藤洋輝(現バイエルン)のように飛躍を遂げることを期待したい。(2024年9月3日時点)

佐野 海舟
(さの かいしゅう)マインツ
- 生年月日:2000年12月30日
- ポジション:MF
2024年夏まで鹿島アントラーズの中盤に君臨していた佐野が、マインツ移籍1年目からブンデスリーガの地で躍動している。言語の問題がある中にも関わらず、開幕からいきなりスタメンの座を掴むと、リーグ前半戦を終えて5位というマインツの躍進に大きく貢献した。
佐野の魅力は、豊富な運動量とボール奪取能力。何度もボールを“回収”してチームのピンチを未然に救う活躍に、現地メディア・ファンからも高い評価を受けている。かつてシュトゥットガルト所属時代にブンデスの2年連続デュエル王に輝いた遠藤航を彷彿とさせる逸材は、シーズン終了までにどこまで飛躍するか楽しみな存在だ。(2025年1月8日時点)

町野 修斗
(まちの しゅうと)ホルシュタイン・キール
- 生年月日:1999年9月30日
- ポジション:FW
湘南ベルマーレでフィジカルとゴール前の嗅覚を武器に得点を量産し、2022年に国内組で構成された日本代表にも選出された町野が1年前に選んだ新しい道は、ブンデス2部のホルシュタイン・キール。1部と比べると、激しさや泥臭さが要求される環境で、31試合出場5得点6アシストという数字を残し、チームの昇格に貢献した。
履正社高から横浜F・マリノスに加入するも、出場機会のないまま1年後にはJ3のギラヴァンツ北九州に移籍となり、そこから這い上がってきた経験を持つ町野だけに、レベルの違うブンデス1部の舞台にもきっと順応できるはずだ。ゴール後に見せる忍者ポーズは、今季何度見ることができるか? その数が増えれば増えるほど、再び日本代表のユニフォームに身を包む日も近付いてくるだろう。(2024年8月1日時点)

フロリアン ヴィルツ
レヴァークーゼン
- 国籍:ドイツ代表
- 生年月日:2003年5月3日
- ポジション:MF
ドイツにまた一人、天才と呼ばれるに相応しい選手が現れた。レヴァークーゼン無敗優勝の立役者ヴィルツだ。決定機を作り出すスルーパスで何度もゴールをお膳立てしつつ、自らも11得点を挙げるという活躍で、チームにとって初となるリーグ優勝に導いてみせた。
2020年に17歳15日というブンデス史上3番目の若さでデビューを果たし、その2週間後にはブンデス史上最年少でのゴールを決めるなど、早くから将来を嘱望されていたがヴィルツ。2021/22シーズンに膝の靭帯を断裂するという大ケガを負ってその影響が心配されたが、本格的な復帰となった昨季についに大ブレイクとなった。
その勢いのまま、母国開催での欧州選手権でも2ゴールを挙げる活躍を見せ、今後のドイツ代表攻撃陣のリーダーに相応しい存在だと証明して見せた。同じく天才と称されるムシアラ(バイエルン)とは、ドイツ代表では頼もしい同僚として、ブンデスリーガでは覇権を争うライバルとして、今後その関係性に注目が集まりそうだ。(2024年8月1日時点)

ハリー ケイン
バイエルン
- 国籍:イングランド代表
- 生年月日:1993年7月28日
- ポジション:FW
昨季開幕前、絶対的なセンターFWを欲していたバイエルンに、イングランド代表最強ストライカーが電撃加入。プレミアリーグ213ゴールを誇り、長年トッテナムをエースとして引っ張って来たケインは、初となるブンデスの舞台でもその実力を発揮し、32試合出場36ゴールという圧巻の数字をで欧州得点王(ゴールデンシュー)に輝いた。
ただ、ケイン個人としては素晴らしい成績を残したものの、肝心のチームはリーグ12連覇を逃しての3位フィニッシュ。これまで経験したことのないタイトル獲得のために、下部組織から所属して主将を長年務めてきたトッテナムを出たケインにとっては、悔しいシーズンになってしまったことは想像に難くない。
イングランドの主将を務めた欧州選手権でも2回連続の準優勝という結果に終わり、またしてもあと一歩でタイトルに手が届かなかった。バイエルンの絶対的エースは、今季こそ「シルバーコレクター」という異名を振り払うことができるのか?(2024年8月1日時点)

ジャマル ムシアラ
バイエルン
- 国籍:ドイツ代表
- 生年月日:2003年2月26日
- ポジション:FW/MF
ブンデス12連覇を目指した昨季はまさかの3位という結果に終わり、今季は王座奪還が至上命題となるバイエルン。昨季は負傷離脱もあった中で、ケインに次ぐ10得点を記録したムシアラへの期待は更に高まっている。
2019年にチェルシー(イングランド)からバイエルンにやってきたムシアラは、翌年には17歳115日というバイエルン史上最年少でブンデスリーガデビューを果たすと、迎えた2022/23シーズンにリーグ12得点10アシストと大ブレイク。そして昨季はケインとともに気を吐き、2年連続の二桁ゴールという継続的な活躍を披露。母国開催での欧州選手権でも、相手守備陣を切り裂くドリブルと見事な嗅覚で3ゴールを記録し得点王に輝いた。
バイエルンにおいてもドイツ代表においても確固たるポジションをつかんだムシアラだが、その伸びしろはまだ天井知らず。同じ21歳で、ドイツ代表では頼りがいのある同僚、ブンデスリーガではタイトルを争うライバルとなるヴィルツ(レヴァークーゼン)との関係性にも今後注目が集まるだろう。(2024年8月1日時点)

チャビ・シモンズ
ライプツィヒ
- 国籍:オランダ代表
- 生年月日:2003年4月21日
- ポジション:FW/MF
バルセロナの下部組織時代から“神童”と謳われたチャビ・シモンズ。昨季はパリサンジェルマン(フランス)からの期限付き移籍でプレーしたライプツィヒに、今季も同様の形で所属することになる見込みだ。ライプツィヒにとっては、非常に大きな残留となる。
若くから将来を嘱望されてきたシモンズは、2022/23シーズンにPSV(オランダ)でリーグ戦19ゴールを挙げる活躍を披露して得点王に輝くと、昨季はライプツィヒでブンデス32試合出場8得点13アシストという出色の出来を披露。加入初年度にして、若き俊英が揃うライプツィヒの中でも抜群の能力があることを証明した。
オランダ代表でも攻撃の中心選手として欧州選手権ベスト4入りに貢献した勢いのまま迎える新シーズン。天から与えられた足元の技術で今年もゴールとアシストを量産することが期待される。(2024年8月1日時点)

セール ギラシ
ドルトムント
- 国籍:ギニア代表
- 生年月日:1996年3月12日
- ポジション:FW
昨季2位に躍進したシュトゥットガルトにおいて、得点ランク2位の28ゴールを挙げる活躍で攻撃陣をけん引したFWギラシが、今季からはドルトムントの一員として戦うことになった。
187cmと長身で強力なフィジカルを誇るギラシだが、身体能力頼みではなく、大きなストライドでのDFライン裏への抜け出し、正確なシュートを放つ技術など多彩な能力を持っている。ゴール前の落ち着きも見事で、ギラシの周辺だけ時間が遅く流れているように錯覚するような独特の感覚を持っている。
昨季はUEFAチャンピオンズリーグで準優勝したものの、リーグ戦では5位に終わったドルトムント。類まれな決定力を備えるギラシには、上位陣に比べて遅れをとった得点力を一気に改善してくれることを期待したい。(2024年8月1日時点)

クリス フューリッヒ
シュトゥットガルト
- 国籍:ドイツ代表
- 生年月日:1998年1月9日
- ポジション:MF
昨季2位と大躍進を遂げたシュトゥットガルトだが、日本代表DF伊藤洋輝、ドイツ代表DFアントン、ギニア代表FWギラシといった中心選手の数多くが移籍でチームを去ることに。今季はMFフューリッヒが、明確なチームの大黒柱として立つシーズンになりそうだ。
昨季は左ウィングとしてプレーし、リーグ戦8ゴール7アシストという素晴らしい数字でチームに貢献したフューリッヒ。スピード溢れるサイド突破から、フィニッシュとアシストを量産してみせた。今季もチームが上位に留まるには、このアタッカーの活躍は必須。アウクスブルクから加入した大型FWデミロヴィッチとのコンビが早いうちに確立できれば、今年もシュトゥットガルトが台風の目になる可能性は十分にあるだろう(2024年8月1日時点)
チーム一覧 -Team List-
DFL/Getty Images/Leon Kuegeler/Christof Kopsel/Daniel Kopatsch/Sebastian Widmann/Christian Kaspar-Bartke/Lukas Schulze/Bori