ドイツ ブンデスリーガ「リーグガイド・日本人&注目選手」
見どころ -Highlights-
無敗優勝レヴァークーゼンに前王者バイエルン、ドルトムント、ライプツィヒらが挑む! バイエルン加入の伊藤、堂安、板倉らの日本人選手にも期待
8/23(金)に24/25シーズンの開幕を迎えるドイツ ブンデスリーガ。昨季はレヴァークーゼンが無敗でシーズンを駆け抜け、12連覇を目指したバイエルンの牙城を崩しての初優勝を成し遂げるという、驚きのシーズンとなった。今季もレヴァークーゼンの天下は続くのか? それとも昨季3位に終わった屈辱を晴らすべくバイエルンが再び立ち上がるのか? はたまた、「今度は自分たちの番だ」とばかりにドルトムント、ライプツィヒらが順位表を駆け上るのか? 今季のブンデスリーガは近年稀に見る激戦が予想されており、非常に楽しみなシーズンとなりそうだ。
激しい一対一をベースに展開される攻撃的なサッカーは、熱狂的なサポーターが集結するスタジアムの雰囲気と相まって、かつてシャルケに所属していた内田篤人が「まるで闘技場」と表現するほど。近年はブンデスリーガから新たな戦術が生まれることも多々あり、戦術マニアから見ても目が離せないリーグである。
現王者レヴァークーゼンはリーグ史上初無敗優勝を果たしただけあって、今年の優勝候補筆頭といえるだろう。シャビ・アロンソ監督のもとでボールを繋ぐ魅力的なスタイルを披露しつつも、試合終了間際に勝ち越し弾や同点ゴールが何度も生まれるなど、勝負強さも兼ね備えている。さらに、欧州選手権での活躍も記憶に新しいドイツ代表MFヴィルツというメガスターの存在が、このチームを輝かせる。
このレヴァークーゼンに挑むのが、ドイツサッカー界の盟主バイエルンだ。昨季は新加入のイングランド代表FWケインが得点王に輝くという活躍をみせたものの、チームとしてはまさかの3位に終わった。ケインのほかにもドイツ代表MFムシアラ、キミッヒといったスターを揃えており選手層は群を抜いているだけに、王座奪還は至上命題との想いでシーズンに臨むはずだ。
このほか、オランダ代表FWマーレンらを擁する魅力的な攻撃陣に昨季ブンデス得点ランク2位のギニア代表FWギラシを加えたドルトムントにも注目。また、欧州選手権ベスト4進出のオランダの攻撃陣でひときわ輝きを見せたMFシャビ・シモンズ、同ベスト16進出を果たしたスロベニア代表の大型FWシェシュコらを擁するライプツィヒが、今季ついに初戴冠を果たす可能性も十分にありそうだ。
昨季2位という躍進を遂げ、今夏に来日もしたシュトゥットガルトでは、日本代表DF伊藤洋輝のほか、FWギラシ、DFアントンらの中心選手が移籍したこともあり、昨季と同等の数字を残すことができるかに注目だ。
そして、ブンデスリーガで活躍する日本人選手にも大注目。まずは、昨季のシュトゥットガルトでの活躍が高く評価され、約40億円とも言われる移籍金でバイエルンに加入した伊藤洋輝だ。開幕前の練習試合でタックルを受けて骨折したため、開幕には間に合わないが、欧州最高峰クラブでの活躍に期待したい。
日本代表の10番を背負う堂安律は、フライブルクで3シーズン目を迎える。加入初年度は5得点、昨季は7得点と同クラブの攻撃陣の中心として存在感を増しており、今季は二桁得点も不可能ではないはずだ。
ボルシアMGには、日本代表DF板倉滉と20歳の新鋭FW福田師王の二人が所属。板倉には守備の大黒柱としての活躍が引き続き期待され、昨季途中にトップチーム昇格した福田にとっては、ブンデス1部の舞台で戦えるのか真価が問われるシーズンとなる。福田と同様に高校卒業後にシュトゥットガルトに加入したチェイス・アンリは、3年目の今季ついにトップチーム昇格。こちらにとっても勝負の1年が始まる。
昨季はシーズン途中に2部ハンブルガーSVへの期限付き移籍を経験したアウクスブルクの奥川雅也にとっては、今季は勝負の一年になりそうだ。2部から昇格してきたホルシュタイン・キールにはFW町野修斗が所属。2部ではリーグ戦31試合5得点を記録してチームに貢献したが、初の1部の舞台でのプレーに注目したい。また、マインツに佐野海舟が鹿島アントラーズから、ボーフムに三好康児がバーミンガム・シティFC(イングランド)からそれぞれ完全移籍で加入している。(2024年9月3日時点)
必見のプレーヤー -Featured Player-
日本人注目選手
伊藤 洋輝
(いとう ひろき)- バイエルン
- 生年月日:1999年5月12日
- ポジション:MF/DF
昨季は2位と躍進したシュトゥットガルトにおいて、マルチな活躍でDFラインを支えた伊藤に今オフ届いたのは、ドイツの盟主・バイエルンからのオファー。新シーズン、日本代表DFは更なる高みを目指して、欧州最高峰クラブでの戦いに臨むことになる。
3年前に当時J2のジュビロ磐田からシュトゥットガルトに期限付きで移籍した当初は、将来を見据えてU-21チームで武者修行する予定だった。しかし、その評価をひっくり返して加入年度開幕直後からポジションを掴んだ伊藤は、そこからの3年間でうなぎ登りに評価を高め、移籍金約40億円とも報じられる額でバイエルンから声がかかるほどまでに躍進を遂げた。
元々はボランチとしてデビューしただけにボール扱いは巧みで、利き足の左足から繰り出させるロングドフィードは高精度を誇り、188cmの長身で空中戦も戦えるという貴重な存在。開幕前の練習試合での骨折により離脱となってしまったが、シーズンが終わった時にバイエルンにとって伊藤がどのような存在になっているか、期待を持って見守っていきたい。(2024年8月1日時点)
堂安 律
(どうあん りつ)- フライブルク
- 生年月日:1998年6月16日
- ポジション:MF
2022年カタールでの大舞台におけるドイツ戦とスペイン戦のゴールで、日本人サッカーファンの記憶に残り続ける存在となった堂安。好選手が揃う日本代表MF陣の中でも、大舞台で結果を残すという勝負強さは特筆すべきものだ。
近年、好成績を続けるフライブルクにおいて3年目を迎える堂安は、今やチーム攻撃陣の中心。初年度は5得点、昨季は7得点と数字を残しており、来季は二桁得点も不可能ではないはずだ。驚異の左足を武器とするアタッカーの更なる飛躍を期待したい。(2024年8月1日時点)
板倉 滉
(いたくら こう)- ボルシアMG
- 生年月日:1997年1月27日
- ポジション:DF/MF
ボルシアMGで3年目を迎える板倉。昨季はシーズン序盤に好調なプレーを披露しながら10月に足首の手術での離脱となったが、ウィンターブレイクでのアジアカップで復帰を果たすと、シーズン後半はボルシアMGの守備陣の要として存在感を見せた。
186cmと長身ながらDFとボランチの両方をこなせるポリバレント性もある板倉。ブンデスの名門クラブで、ケガと戦いながらも2シーズン続けてチームから認められる活躍を披露した。日本代表のDF陣においても最早欠かせない存在となった中、今季は更にもう一段上の活躍を期待できるかもしれない。(2024年8月1日時点)
福田 師王
(ふくだ しおう)- ボルシアMG
- 生年月日:2004年4月8日
- ポジション:FW
19歳にしてU-22日本代表にも選出されるなど、日本代表としての将来を嘱望される福田。昨季途中にトップチームに昇格しブンデス1部デビューも果たすなど、ドイツの名門ボルシアMGにおいてもその潜在能力は認められている。
神村学園高時代には冬の選手権で得点王に輝くなど、高い評価を得ていた世代屈指のストライカーは、Jリーグ入りではなくドイツ名門クラブの下部組織からの挑戦。高校卒業前の1月にチームに合流して同世代のU-19チームで結果を残すと、渡独からわずか1年でトップチームへの切符を勝ち取った。
今季は開幕前の練習試合でゴールという結果を残すなど、自身としてもトップで戦えるという自信を深めているはず。期待の新星の輝きが本物なのか、楽しみなシーズンとなりそうだ。(2024年8月1日時点)
チェイス・アンリ
- シュトゥットガルト
- 生年月日:2004年3月24日
- ポジション:DF
シュトゥットガルトからのオファーを受け、高校卒業後に直接海外行きという選択をした逸材が、20歳となって迎えた加入3年目にしてついにトップチーム昇格。今季開幕戦で途中出場からデビューを飾ると、第2戦では初スタメンと、順調なスタートを切っている。
尚志高時代に高校サッカー界屈指のディフェンダーとして評価され、日本A代表にもトレーニングパートナーとして参加した経験を持つチェイス・アンリ。187cmという長身の上にスピードも持ち合わせるという恵まれたフィジカルを武器に、クラブの日本人の先輩である遠藤航(現リヴァプール)と伊藤洋輝(現バイエルン)のように飛躍を遂げることを期待したい。(2024年9月3日時点)
町野 修斗
(まちの しゅうと)- ホルシュタイン・キール
- 生年月日:1999年9月30日
- ポジション:FW
湘南ベルマーレでフィジカルとゴール前の嗅覚を武器に得点を量産し、2022年に国内組で構成された日本代表にも選出された町野が1年前に選んだ新しい道は、ブンデス2部のホルシュタイン・キール。1部と比べると、激しさや泥臭さが要求される環境で、31試合出場5得点6アシストという数字を残し、チームの昇格に貢献した。
履正社高から横浜F・マリノスに加入するも、出場機会のないまま1年後にはJ3のギラヴァンツ北九州に移籍となり、そこから這い上がってきた経験を持つ町野だけに、レベルの違うブンデス1部の舞台にもきっと順応できるはずだ。ゴール後に見せる忍者ポーズは、今季何度見ることができるか? その数が増えれば増えるほど、再び日本代表のユニフォームに身を包む日も近付いてくるだろう。(2024年8月1日時点)
フロリアン ヴィルツ
- レヴァークーゼン
- 国籍:ドイツ代表
- 生年月日:2003年5月3日
- ポジション:MF
ドイツにまた一人、天才と呼ばれるに相応しい選手が現れた。レヴァークーゼン無敗優勝の立役者ヴィルツだ。決定機を作り出すスルーパスで何度もゴールをお膳立てしつつ、自らも11得点を挙げるという活躍で、チームにとって初となるリーグ優勝に導いてみせた。
2020年に17歳15日というブンデス史上3番目の若さでデビューを果たし、その2週間後にはブンデス史上最年少でのゴールを決めるなど、早くから将来を嘱望されていたがヴィルツ。2021/22シーズンに膝の靭帯を断裂するという大ケガを負ってその影響が心配されたが、本格的な復帰となった昨季についに大ブレイクとなった。
その勢いのまま、母国開催での欧州選手権でも2ゴールを挙げる活躍を見せ、今後のドイツ代表攻撃陣のリーダーに相応しい存在だと証明して見せた。同じく天才と称されるムシアラ(バイエルン)とは、ドイツ代表では頼もしい同僚として、ブンデスリーガでは覇権を争うライバルとして、今後その関係性に注目が集まりそうだ。(2024年8月1日時点)
ハリー ケイン
- バイエルン
- 国籍:イングランド代表
- 生年月日:1993年7月28日
- ポジション:FW
昨季開幕前、絶対的なセンターFWを欲していたバイエルンに、イングランド代表最強ストライカーが電撃加入。プレミアリーグ213ゴールを誇り、長年トッテナムをエースとして引っ張って来たケインは、初となるブンデスの舞台でもその実力を発揮し、32試合出場36ゴールという圧巻の数字をで欧州得点王(ゴールデンシュー)に輝いた。
ただ、ケイン個人としては素晴らしい成績を残したものの、肝心のチームはリーグ12連覇を逃しての3位フィニッシュ。これまで経験したことのないタイトル獲得のために、下部組織から所属して主将を長年務めてきたトッテナムを出たケインにとっては、悔しいシーズンになってしまったことは想像に難くない。
イングランドの主将を務めた欧州選手権でも2回連続の準優勝という結果に終わり、またしてもあと一歩でタイトルに手が届かなかった。バイエルンの絶対的エースは、今季こそ「シルバーコレクター」という異名を振り払うことができるのか?(2024年8月1日時点)
ジャマル ムシアラ
- バイエルン
- 国籍:ドイツ代表
- 生年月日:2003年2月26日
- ポジション:FW/MF
ブンデス12連覇を目指した昨季はまさかの3位という結果に終わり、今季は王座奪還が至上命題となるバイエルン。昨季は負傷離脱もあった中で、ケインに次ぐ10得点を記録したムシアラへの期待は更に高まっている。
2019年にチェルシー(イングランド)からバイエルンにやってきたムシアラは、翌年には17歳115日というバイエルン史上最年少でブンデスリーガデビューを果たすと、迎えた2022/23シーズンにリーグ12得点10アシストと大ブレイク。そして昨季はケインとともに気を吐き、2年連続の二桁ゴールという継続的な活躍を披露。母国開催での欧州選手権でも、相手守備陣を切り裂くドリブルと見事な嗅覚で3ゴールを記録し得点王に輝いた。
バイエルンにおいてもドイツ代表においても確固たるポジションをつかんだムシアラだが、その伸びしろはまだ天井知らず。同じ21歳で、ドイツ代表では頼りがいのある同僚、ブンデスリーガではタイトルを争うライバルとなるヴィルツ(レヴァークーゼン)との関係性にも今後注目が集まるだろう。(2024年8月1日時点)
チャビ・シモンズ
- ライプツィヒ
- 国籍:オランダ代表
- 生年月日:2003年4月21日
- ポジション:FW/MF
バルセロナの下部組織時代から“神童”と謳われたチャビ・シモンズ。昨季はパリサンジェルマン(フランス)からの期限付き移籍でプレーしたライプツィヒに、今季も同様の形で所属することになる見込みだ。ライプツィヒにとっては、非常に大きな残留となる。
若くから将来を嘱望されてきたシモンズは、2022/23シーズンにPSV(オランダ)でリーグ戦19ゴールを挙げる活躍を披露して得点王に輝くと、昨季はライプツィヒでブンデス32試合出場8得点13アシストという出色の出来を披露。加入初年度にして、若き俊英が揃うライプツィヒの中でも抜群の能力があることを証明した。
オランダ代表でも攻撃の中心選手として欧州選手権ベスト4入りに貢献した勢いのまま迎える新シーズン。天から与えられた足元の技術で今年もゴールとアシストを量産することが期待される。(2024年8月1日時点)
セール ギラシ
- ドルトムント
- 国籍:ギニア代表
- 生年月日:1996年3月12日
- ポジション:FW
昨季2位に躍進したシュトゥットガルトにおいて、得点ランク2位の28ゴールを挙げる活躍で攻撃陣をけん引したFWギラシが、今季からはドルトムントの一員として戦うことになった。
187cmと長身で強力なフィジカルを誇るギラシだが、身体能力頼みではなく、大きなストライドでのDFライン裏への抜け出し、正確なシュートを放つ技術など多彩な能力を持っている。ゴール前の落ち着きも見事で、ギラシの周辺だけ時間が遅く流れているように錯覚するような独特の感覚を持っている。
昨季はUEFAチャンピオンズリーグで準優勝したものの、リーグ戦では5位に終わったドルトムント。類まれな決定力を備えるギラシには、上位陣に比べて遅れをとった得点力を一気に改善してくれることを期待したい。(2024年8月1日時点)
クリス フューリッヒ
- シュトゥットガルト
- 国籍:ドイツ代表
- 生年月日:1998年1月9日
- ポジション:MF
昨季2位と大躍進を遂げたシュトゥットガルトだが、日本代表DF伊藤洋輝、ドイツ代表DFアントン、ギニア代表FWギラシといった中心選手の数多くが移籍でチームを去ることに。今季はMFフューリッヒが、明確なチームの大黒柱として立つシーズンになりそうだ。
昨季は左ウィングとしてプレーし、リーグ戦8ゴール7アシストという素晴らしい数字でチームに貢献したフューリッヒ。スピード溢れるサイド突破から、フィニッシュとアシストを量産してみせた。今季もチームが上位に留まるには、このアタッカーの活躍は必須。アウクスブルクから加入した大型FWデミロヴィッチとのコンビが早いうちに確立できれば、今年もシュトゥットガルトが台風の目になる可能性は十分にあるだろう(2024年8月1日時点)
チーム一覧 -Team List-
DFL/Getty Images/Leon Kuegeler/Christof Kopsel/Daniel Kopatsch/Sebastian Widmann/Christian Kaspar-Bartke/Lukas Schulze