4万人以上という、欧州リーグで最多の平均観客数を誇るブンデスリーガ。昨季に前人未踏の8連覇を達成した王者・バイエルンを中心に、ドルトムント、ライプツィヒなどが魅力的なサッカーで覇権を争い、数多くの日本人選手も世界中から集まった猛者たちと鎬を削る。
激しい一対一をベースに展開される攻撃的なサッカーは、熱狂的なサポーターが集結するスタジアムの雰囲気と相まって、かつてシャルケに所属していた内田篤人が「まるで闘技場」と表現するほど。近年はブンデスリーガから新たな戦術が生まれることも多々あり、戦術マニアから見ても目が離せないリーグである。
今季の優勝候補筆頭はやはりバイエルン。昨季は序盤戦で苦しんだが、指揮官がハンジ・フリック監督に代わってから息を吹き返すと、怒涛の13連勝でリーグ8連覇を達成。さらに、UEFAチャンピオンズリーグでも圧倒的なパフォーマンスで優勝し、現在名実ともに欧州最強クラブと言える存在だ。今季は、ポーランド代表FWロベルト・レバンドフスキらの主力に加え、マンチェスターC(イングランド)からドイツ代表FWレロイ・ザネを獲得し、前人未踏の9連覇へ突き進む。
これに対し、昨季2位のドルトムントは欧州最高レベルの若手選手を中心に対抗することになる。ノルウェー代表の”怪物”FWアーリン・ホーラン、イングランド代表の“神童”FWジェイドン・サンチョらはともに若干20歳で、彼らの勢い溢れるプレーを世界が注目している。また、UEFAチャンピオンズリーグでベスト4進出を果たした昨季3位ライプツィヒも、33歳の青年監督ユリアン・ナーゲルスマンのもとで今年も優勝争いに加わってくることが予想される。
そして、多数が活躍する日本人選手にも大注目。フランクフルトでは、ブンデスリーガ最年長選手となる36歳の長谷部誠が今季も中心選手としてのプレーが予想され、昨季公式戦10得点と大ブレイクを果たした鎌田大地は更なる飛躍を目指す。昨季終盤戦で得点を量産して名門ブレーメンを降格の危機から救った大迫勇也は、同クラブで3季目を迎える。また、遠藤航はシュトゥットガルト昇格の立役者の一人としてブンデス1部での戦いに挑む。
また、今季は新たに2人の日本人選手が加入。日本代表でも活躍する22歳の堂安律が、来年開催予定の東京五輪も見据えてPSV(オランダ)から期限付きで昇格組のビーレフェルトに移籍し、攻撃陣の中心としてプレーが期待される。そして、昨季J1優勝の横浜F・マリノスからウニオンベルリンに期限付き移籍したサイドアタッカーの遠藤渓太も、どのような活躍を見せてくれるか注目だ。(2020年9月16日時点)
写真:アフロ
ガンバ大阪から移籍したフローニンゲン(オランダ)で驚異的な左足を武器にゴールを量産して19歳にして頭角を現すと、昨季には名門PSV(オランダ)に加入し、欧州でも注目の若手となった堂安。22歳となった今シーズンは期限付きでビーレフェルトへの移籍を選択し、ブンデスリーガの舞台に挑む。
日本代表でも確固たる地位を築き、2021年に開催予定の東京五輪にも日本のエース格としての出場が期待される逸材。昇格組のビーレフェルトでは攻撃陣の中心としての起用が見込まれるが、その能力を存分に発揮すれば、バイエルンやドルトムントといった強豪相手に得意の左足でゴールという結果を残すことも十分に可能なはずだ。(2020年9月23日時点)
昨季、開幕からフランクフルトのディフェンスラインの中心として出場を続けた長谷部は、第30節のマインツ戦でアジア出身選手として歴代最多となるブンデスリーガ309試合出場を達成。危険を察知していち早くポイントに入るポジションニングと攻撃の起点となる気の利いたパスを繰り出す日本のレジェンドは、チームに欠かせない存在であることをまたしても証明してみせた。
そして迎えるブンデスリーガでの14年目、36歳でリーグ最年長選手となった今季も出場記録の更新と活躍が期待される。フランクフルトと延長した契約は今季終了までで、引退後は同クラブのアンバサダー就任が決定している状況を考えれば、ピッチ上で長谷部を見られる時間は無限ではない。
攻撃的MFとしてデビューしながらドイツ移籍を経て様々なポジションを経験し、今やDFラインを統率する存在に変貌した長谷部。技術やフィジカルが特に際立っているわけではないが、試合の流れを読んでプレーできるサッカーIQは猛者たちが集まるブンデスリーガでも屈指の存在だ。“整っている男”は、今年も我々に、競争社会で生き残る術を見せてくれることだろう。(2020年9月23日時点)
ベルギーのシントトロイデンで13得点と結果を残してフランクフルトに復帰した昨季、鎌田は公式戦10得点に加えて超絶アシストも量産し、一躍チームの攻撃の中心選手に。チームメイトからも「違いを生み出せる存在」と評されるほどに躍進を遂げた。
フランクフルト復帰後2年目となる今季、鎌田の両足には更なる期待が集まる。もう伏兵とは言えない存在であるため、対戦相手からのマークが強まることが予想されるが、緩急を自在に操るドリブルと独特なパスセンスを武器にブンデスリーガの猛者を手玉に取ってくれるはずだ。天才的なクリエティビティに安定感が加われば、日本代表にとっても大きな存在になることは間違いない。(2020年9月23日時点)
昨季は開幕3試合で3得点と好調なスタートを切った大迫だが、負傷のため戦線離脱を余儀なくされると、復帰後もなかなか得点に絡むことができずチームも降格圏に沈む厳しい時期を過ごした。それでもコロナウイルスによる中断を経て迎えた終盤戦にゴールを量産し、チームを1部残留に導く活躍を見せた。
日本代表では、大迫がいるといないとではゲームの展開が全く変わってしまい、『大迫依存症』という言葉が当てはまるほどその存在は際立っている。30歳となって名門ブレーメンで迎える3年目、チームを上位に導けるのか真価が問われるシーズンになるが、その世界でも通用するポストプレーを武器に、”半端ない”ところをドイツの地でも証明して欲しい。(2020年9月23日時点)
昨季は、シントトロイデンでの活躍が認められてブンデスリーガ2部のシュトゥットガルトに移籍した遠藤。開幕当初は出場期間に恵まれなかったが、11月に入ってからその能力が認められて初めてピッチに立つと、監督交代もあった中でも先発フル出場を続け、2位で1部昇格を果たしたチームに大きく貢献した。
屈強な相手との一対一でも引けをとらずDFラインの前でボールを奪い、攻撃陣に的確なパスを配給する姿は「チームの銀行」と称されるほどの安定感で、ブンデス2部のベストイレブンにも選ばれた。初挑戦となる1部の舞台で更なる飛躍を遂げることができるか、日本代表の中盤の要でもある遠藤には、大きな期待が寄せられる。(2020年9月23日時点)
昨季にJ1リーグで優勝した横浜F·マリノスの快速アタッカーが、1年間の期限付きでウニオンベルリンに移籍。ブンデスリーガで新たな挑戦に臨むことになった。
横浜FMの下部組織育ちの遠藤は、18歳でJ1デビューを飾ると、2018年にはルヴァンカップのニューヒーロー賞に選出され、そして2019年は左サイドのアタッカーとして7得点を挙げる活躍でチームのリーグ優勝に大きく貢献。日本で確かな足跡を残してから挑むブンデスリーガでも、スピードとテクニックは必ず通用するはず。フィジカル面とメンタル面の困難を乗り越えることができれば、ドイツのサッカーファンを驚かせる存在になれるはずだ。(2020年9月23日時点)
ブンデスリーガ、ドイツカップに加えてUEFAチャンピオンズリーグも制して三冠を達成したバイエルン。その現欧州最強チームのエースが、3大会合計55得点を挙げて個人としても得点王"三冠"に輝いたレバンドフスキだ。
類まれな得点感覚を持つポーランド代表ストライカーは、ドルトムントで日本代表MF香川真司らとともに活躍して頭角を現すと、2014/15シーズンからバイエルンに移籍。右足·左足·頭と様々なパターンでゴールを量産し、リーグ8連覇中のチームにおいても不動の存在だ。ブンデスリーガの歴史に名を残すことが確実な最強ストライカーは、新シーズンもファンの期待に応えてくれるはずだ。(2020年9月23日時点)
ドイツ代表の今後を背負う存在として将来を嘱望されるザネが、マンチェスターC(イングランド)からバイエルン移籍を決断。20歳でシャルケからマンCに移籍して以来、4年ぶりにブンデスリーガに復帰することになった。
昨季はケガのためほとんど試合に出場できなかったものの、左サイドを主戦場に相手守備陣をズタズタに切り裂く世界最高峰のスピードは健在。ただでさえ分厚いバイエルンの選手層に、とんでもない武器が加わることになった。チームの今後5年のメインキャストとして期待される超速ウィンガーの、ドイツ復帰1年目のプレーは要注目だ。(2020年9月23日時点)
昨季、UEFAチャンピオンズリーグで19歳にしてハットトリックを達成するなど、ザルツブルク(オーストリア)を日本代表MF南野拓実(現リバプール/イングランド)らとともに躍進に導いたホーラン。冬の移籍市場でドルトムントにステップアップを果たした後も、ブンデスリーガデビュー戦で史上初の途中出場でのハットトリックを飾るなど、公式戦18試合出場16得点という驚愕の成績を残し、弱冠20歳にして今後のリーグの"顔"に相応しい存在感を示した。
移籍当初は、いきなりブンデスリーガのトップレベルで活躍できるかは未知数という評価もあったが、194cmという恵まれた体格と繊細な得点感覚を生かして様々なゴール記録を更新し、その不安を一蹴。不動のエースとして迎える新シーズン、9連覇を狙うバイエルンをドルトムントが止められるかどうかは、20歳の怪物にかかっている。(2020年9月23日時点)
17歳で将来性を見込まれてマンチェスターC(イングランド)の下部組織からドルトムントに引き抜かれたサンチョ。順調に成長を続けると、昨季は公式戦20得点20アシストと素晴らしい成績を残すまでにステップアップを果たし、ドルトムントを背負って立つ存在として新シーズンに臨む。
スピードとテクニックは一級品の上、さらに特筆すべきなのはゴール前での落ち着き。まだ20歳ながら、相手守備陣のプレッシャーが強まる中でも最善のプレー選択と高い技術を表現できるサッカーIQは、特に高く評価されている。設定されている移籍金は約150億円とも報じられるイングランドの神童が、同世代のFWホーランとともに持っている才能を完全に発揮すれば、9連覇を狙うバイエルンを倒すことも可能だろう。(2020年9月23日時点)
まだライプツィヒが2部だった2015/16シーズンにドイツデビューを果たすと、チームとともに躍進を続け、今ではリーグ屈指の攻撃的MFに成長したザービッツァ。昨季は公式戦16ゴール11アシストを挙げてライプツィヒのリーグ3位、UEFAチャンピオンズリーグ4強入りの原動力となった。
高いドリブル、パス能力に加え、2列目からの飛び込みと強烈なロングシュートでゴールを量産。「天才」というタイプではないが、様々なポジションでプレーでき、全てのプレーを高次元で融合し、豊富な運動量で攻守にさぼることがなく、どの監督の下でも長用されてきた。エースだったドイツ代表FWティモ ベルナーがチェルシー(イングランド)へと去ったライプツィヒだが、ザービッツァというキーマンがいる限り、今季もハイレベルなサッカーを見せてくれることだろう。(2020年9月23日時点)