
Jリーグコラム Jリーガーの素顔

Jリーガーの素顔「石川直宏選手 編」
2010年2月15日
1、ゴールに対するイメージの変化
普段、サッカーの試合はご覧になりますか?
Jリーグの試合を観ることが多いですね。あとはスカパー!の映像で自分が出場した試合をビデオで見返すことはします。
ご自宅でもサッカーモードだと頭も疲れてしまいませんか?
リフレッシュのための方法としてサッカーを観る選手も多いのですが、僕はなかなか素の状態で観ることができないんですよ。自分だったらこうプレーするというのをつい考えてしまうんです。ただ、バルセロナクラスの質の高いサッカーだと素になれるので、すごく新鮮な気持ちで観ることができます。
やっぱり気になるのは、ご自分と同じポジションの選手ですか?
そうですね。基本的にはボールを中心にして、サイドのスペースをどういった動きで使うのかを気にしながら観ています。
現在、注目している選手はいますか?
最近はプレーよりも選手の歩んできた道のりが気になっています。例えば、ギグスのようにポジションを変更しながら長く現役を続けている選手など本当にすごいと思います。選手によって色々なタイプがありますが、そういった柔軟な部分は同じプレーヤーとして参考になります。
昨シーズンは、以前のようにスピードで縦を切り裂くというプレーに加え、ドリブルで中央へ切り込んでフィニッシュを決めるなどプレースタイルに幅がでてきたように感じるのですが、何か変化があったのでしょうか?
以前まではサイドでプレーすることに喜びを感じていたんです。でも、今はチームが勝つために他にも必要な要素があるんじゃないか、という判断ができるようになってきました。チームが変化する中で、自分もそれに上手く対応していく。また、その中で自分の新たな力を発見し、それを成長させる、という意識で昨シーズンはプレーをしていました。
昨シーズン、公式戦で連続ゴール数『6』を記録し、一時は得点王を狙えるくらいゴールを量産していましたね?
多くのゴールを決められたというのは、チームと僕個人のイメージの共有がスムーズにいったのが一番の要因だと思います。本当に周りの選手たちに活かしてもらったと思っています。僕に点を獲らせてくれるような動きをチームの皆がやってくれたからこそのゴールです。
調子の良いときは、シュートを打てば決まるという感覚があるのですか?
確かに調子が良いときの感覚というのはあります。ただ、昨シーズンは調子が良いというだけではなく、常に決められるイメージがあるからシュートを打つという感覚でした。単に調子の良いときは具体的なイメージはなく、打てば入るという感じなんです。でも、昨シーズンはすべてイメージがあって『この部分にボールを流し込む』というのがはっきり見えた中での得点でした。だから、自分の中でゴールに対するイメージというのがはっきりと変わりましたね。
今まではゴールに対してどういったイメージを持っていたのですか?
今までは、『大体、この辺かな?』というイメージでシュートを打つことが多かったんです。調子の良いときは打てば入るという感覚。でも、今は、ここだとはっきりとしたコースが見える。ゴールのための視界が開けた感覚です。
2、サッカー選手にとって必要なこと
石川選手は三人兄弟で皆さん、サッカー選手、元サッカー選手という環境なのですね。しかも、皆さんポジションが違うというのも不思議ですね?
そうなんです(笑)。元々、小学校の頃は皆、ポジションも一緒だったんですけどね。次男の貢は身体が大きかったのでディフェンダーに転向したんです。そして三男の扶は兄弟の中でも一番身体能力が高かったので『3人いる中で一人くらいキーパーやってもいいじゃん!』という感じでキーパーをやらせて(笑)。本格的な練習はしていませんでしたが、近所のグラウンドで扶をキーパーにして遊びでシュートを打ったりしていました。
ご兄弟でサッカーの話をすることはありますか?
プレーの話はほとんどしないですね。でも、年初めに久しぶりに兄弟が集まる機会があったので、3人でサッカーをして遊びましたよ。
石川選手がシーズン中、特に気をつけていることは何でしょうか?
痩せやすい体質なので体重を落とさないようにゴハンをたくさん食べて、きちんと休養をとるようにしています。あとはトレーニング後に膝と体幹の強化ですね。上半身、下半身の筋トレもそうですが体幹の強化には力を入れています。
趣味のサーフィンでも体幹が鍛えられそうですね?
バランスは鍛えられると思いますよ。あとパドルするときの肩甲骨周りもスムーズになります。これ、意外と大事なんですよ。そう考えると、サッカーにも通じるところは結構ありますね。でも、僕の一番の目的は癒しとリラックスですけど(笑)。
将来、サッカー選手を目指している子供たちにアドバイスをお願いできますか?
プレーの面では、自分の得意なカタチを身につけること。足が速いのなら、それを活かしたドリブルができる能力を身に付ける。ヘディングが得意なら、それを活かせるような良いポジショニングをとれるトレーニングをする。そういった得意なカタチを一つ持っていると、自信にもなるので大事なことだと思います。それ以外だと基本的な部分ですが、人の話をきちんと聞く、またそれを理解できる能力を身に付けること。あとは謙虚な姿勢で何事にも取り組むことだと思います。その辺は大人も子供も同じだと思います。
石川選手が子供の頃に得意としていたプレーは何でしょうか?
ドリブルがすごく好きで、自分のフェイントで相手をかわすことに喜びを感じていました。それは今でも変わりません。だから、子供の頃から僕を知っている人は今のプレーを見ても『昔と変わってないね』と言って懐かしんでくれます。
憧れの選手の真似はしましたか?
シザースやカズダンスなどカズさんの真似はよくしていました。憧れの選手でしたから(笑)。
子供の頃に憧れていたその選手が現在も現役でプレーしているというのは、刺激になりますよね?
子供の頃から目標にしていた選手が現役にこだわってプレーしているというのは憧れであり、本当に大きな存在です。僕も子供たちに目標にしてもらえるような存在の選手になって、その子たちが成長した時に対戦したいという想いがあるので、できるだけ現役でプレーしたいと思います。
それでは10年後も現役で?
そうですね、カズさんのように現役でやっていたいですね(笑)
3、新シーズンへの意気込み
02年シーズンの途中、FC東京の施設見学でクラブハウスを訪れたとき、当時の監督、原博実さん(現・日本サッカー協会技術委員長)との面談で移籍を決心したとお聞きしたのですが?
当時、(横浜F・)マリノスに在籍していたのですが、なかなか試合に出られない状態が続いていた中で、FC東京からオファーをいただいたんです。そして監督とお話をしていく中で『今、来たら使っちゃうよ』って言われて。名言ですよね、僕は試合に出たくてうずうずしていたので、そんな台詞を聞いたら、絶対にこのチームでアピールしてレギュラーになろうと決めちゃいますよ(笑)。
原さんは01年にアルゼンチンで開催されたワールドユース選手権(現・U-20ワールドカップ) でU-20日本代表の石川選手のプレーを現地でご覧になっていたようですね?
そうなんですよ。それに大会後、あまり試合に出られなかった状況の中でも僕のことを原さんは気に掛けてくれていたみたいでした。そういう方がチャンスを与えてくれたというのは本当にうれしかったし、諦めずにサッカーをやっていてよかったと思いました。
02年の途中からチームに加わり、今やもうFC東京の顔ですね?
いやいや、ただ長くいるだけです(笑)。このチームには僕だけじゃなく可能性も実力もある個性的な選手がたくさんいますから。何よりも今、チームはすごくいい雰囲気ですよ。皆、仲間であり、ライバルであり、いい関係で伸び伸びとサッカーをできています。
昨年はタイトル(ナビスコカップ優勝)も獲得し、いいシーズンだったという印象はありますか?
端から見るといいシーズンだったのかもしれませんが、満足はしていません。正直、まだまだだなと思いました。新シーズンはそういった想いを最初からぶつけていきたいです。
昨年のJリーグアウォーズでは、初のベストイレブンを受賞されましたね?
毎年、ベストイレブンのメンバーを見るとシーズンを通して、高いレベルで戦っているという印象を持っていたんです。僕の課題もシーズンを通して戦うところにあるのですが、そこに選ばれたというのはうれしかったです。あと鹿島の選手たちがチームでアウォーズに出席しているのを見て、正直、羨ましいと思いました。来年はここへFC東京の皆と一緒に来たいな、と。そして、さらに個人的な賞も獲れれば最高です。
新シーズンはどんな年にしたいですか?
Jリーグで優勝争いを続けて、最後に優勝したいです。個人的には昨年積み上げてきたものがあるので、それを活かして、さらに結果を残していきたいと思います。また、今年はワールドカップもあるので、日本の目標、ベスト4の力にもなれればうれしいです。日本のサッカーはまだ世界に認められていない部分があるので、世界をギャフンと言わせたいし、驚かせたいですね。
4、幼い頃からの夢の舞台に向かって
今年、チームでは羽生選手に次いで2番目の年長者になりましたね?
フジさん(藤山竜仁/札幌)やサリさん(浅利悟/引退)など、長い間このチームを引っ張ってきた選手は背中で『ついて来い!』というタイプでした。僕も同じタイプで、あれこれ言うよりも自分の姿を見て、若手が何かを感じてくれればと思います。また、そういった若い選手が試合に出られなくて溜め込んでいるパワーを練習にぶつけられる雰囲気を作ってあげたい。僕も試合に出られなくて溜め込んでいたものを練習にぶつけることで成長できましたから。力があるのにそれを発揮できない若手は多いので、そういったところを上手く引き出してあげられるような存在になっていきたいですね。
さて、いよいよ今年、ワールドカップ南アフリカ大会が開催されます。石川選手にとってワールドカップとはどういった大会ですか?
子供の頃に86年のメキシコ大会を観て以来、夢です。その大会に自分が参加するかもしれないと思うと、ワールドカップ=サッカーのお祭り、ではなくなっています。その前にまずは23人のメンバーに入って、結果を残すというのが目標になっています。厳しい戦いですが、自分らしさを出してチャレンジしていきたいと思います。
胸に日の丸をつけて戦うというのはどういったお気持ちでしょうか?
子供の頃からの憧れなので重みがありますし、プレッシャーも感じていますが、そこで得られるものは確実に多いんです。それだけ皆さんが期待してくれているということですから。自分も世界を相手にどれくらいやれるのか試してみたいと思っています。
石川選手にとってサッカーとはどういった存在ですか?
『すべて』とまでは言いませんが、それに近い存在です。5歳からサッカーをやっているのでもう24年間の付き合いになりますから…。ん?もうすべてと言ってもいい存在ですね(笑)。でも、20年間以上、一つのことをやり続けても、まだまだ面白くて、色々な発見があるので本当に魅力的なものだと思いますよ。
それでは最後にスカパー!をご覧の皆さんにメッセージをお願いします。
皆さん、色々な番組をご覧になっていると思うのですが、僕の中では流行に敏感な方々がスカパー!に加入しているというイメージがあります。その中で普段、サッカーを観ていない人にも興味を持ってもらえたら、うれしいです。僕たちサッカー選手は、もっとたくさんの人たちに試合を観てもらいたいし、サッカーを楽しんでもらいたいと思っています。そのためにも、ふとサッカーの試合にチャンネルを合わせた時、驚きとショックを与えられるプレーをお見せできるようにがんばります。まずはテレビでサッカーを観て、そしてスタジアムへ遊びにきてくれたらうれしいです。


















